新しい働き方体験談

システムエンジニア夫婦の挑戦:地方移住で乗り越えた情報格差と地域共創の道のり

Tags: 地方移住, リモートワーク, 情報格差, 子育て, 地域共創, システムエンジニア

はじめに:都市の閉塞感から見出した地方移住という選択肢

こんにちは。私たちは現在、妻と二人の子供(小学3年生、幼稚園年長)と共に、都心から電車で約2時間の自然豊かな地方都市で暮らしております。夫婦ともにシステムエンジニアとして都内の企業に勤めておりましたが、コロナ禍をきっかけにリモートワークが常態化したことで、都市部での生活に疑問を感じるようになりました。満員電車での通勤ストレス、家賃の高騰、そして何よりも、子供たちが伸び伸びと遊べる環境が少ないことへの懸念が募っていったのです。

地方移住はかねてより考えておりましたが、一番の不安は「情報格差」でした。都市に比べ、生活情報、教育情報、そして仕事に関する情報が格段に少なくなるのではないかという漠然とした不安を抱えていたのです。しかし、この不安を乗り越え、新しい働き方と生活を築くことができた私たちの体験談を、皆様にお伝えできれば幸いです。

移住先の選択と決め手:情報収集の限界と覚悟

移住先を決めるにあたり、私たちは主に以下の条件を重視しました。

インターネットでの情報収集に加え、休日を利用して候補となる地域へは複数回足を運びました。しかし、実際に住んでみなければ分からない情報が多いことを痛感しました。特に、地域の医療機関の質、教育現場の雰囲気、そして地域コミュニティの様子などは、限られた情報からは把握しきれない部分でした。最終的には、インターネットの情報と現地訪問で得た「肌感覚」を信じ、「情報が少ないなら、自分たちで作り出す、探し出す」という覚悟を持って、現在の地域への移住を決めました。決め手は、地元の方が運営されているウェブサイトで見つけた「子育てに優しい地域」という記事でした。

移住前の準備と計画:現実的な視点での情報収集

移住前の準備では、特に以下の点に注力しました。

  1. 住居探し: 不動産情報サイトだけでなく、地域の空き家バンクや移住支援窓口を積極的に活用しました。都市部と異なり、物件数が限られているため、希望通りの家を見つけるには時間と労力がかかりました。最終的には、リノベーションが可能な中古の一軒家を購入し、自分たちのライフスタイルに合わせて改修する選択をしました。
  2. 仕事の継続性: 私たちの会社はリモートワークが認められていましたが、万が一のキャリアパスについても検討しました。地方での転職市場の調査や、副業としての地域連携プロジェクトへの参加可能性なども視野に入れました。
  3. 教育環境のリサーチ: 移住先の小学校と幼稚園には事前に連絡を取り、見学をさせてもらいました。オンラインでは得られない、先生方や子供たちの活き活きとした様子を直接確認できたことは、大きな安心材料となりました。
  4. 行政手続きの確認: 住民票の移動、運転免許証の住所変更、子育て関連の補助金申請など、必要な手続きをリストアップし、漏れがないように準備しました。

移住後の生活:直面した「情報格差」との向き合い方

移住後、私たちは「情報格差」を様々な場面で実感しました。

住まいと交通

都市部では当たり前のように利用していた公共交通機関は、私たちの住む地域では本数が少なく、自家用車が生活必需品となりました。自動車の維持費やガソリン代は想定よりも負担になりました。また、住居の確保はできましたが、地域の工務店選びやリフォーム業者に関する信頼できる情報が少なく、知り合いからの紹介が頼りになるなど、人とのつながりの重要性を感じました。

子育てと教育環境

子供たちの学校生活においては、都市部のような多様な塾や習い事の選択肢は少ない状況でした。また、学校のイベントや地域の行事に関する情報伝達は、回覧板や口頭が中心で、移住当初は情報を見落とすこともありました。妻は特にこの点に不安を感じ、子供が都市での教育機会を失うのではないかと心配していました。

買い物と医療

日常の買い物は地元のスーパーや道の駅が中心となり、選択肢は限られます。オンラインストアを活用するようになりましたが、送料の問題や配送リードタイムの長さも考慮に入れる必要がありました。医療機関に関しては、専門性の高い病院は限られており、事前に調べておくことの重要性を痛感しました。幸い、私たちの住む地域には小児科がありましたが、夜間や休日の対応については都市部に比べて制約があると感じています。

地域コミュニティへの馴染み方

移住当初は、地域にどう溶け込むべきか手探りの状態でした。都市部では希薄だった近所付き合いや、地域の行事への参加が推奨される文化に戸惑いもありました。しかし、積極的に自治会の活動に参加したり、地域のイベントに家族で顔を出したりするうちに、少しずつ顔と名前を覚えてもらい、地域の皆さんが温かく受け入れてくれるようになりました。地域の情報も、今では「人から人へ」という形で入ってくることが多くなりました。

リモートワークの実践と「情報格差」への対応

リモートワークの環境構築では、高速なインターネット環境の確保が最優先でした。移住先の住居に光回線が引かれていない場合は、自治体の補助金制度などを活用して工事を進めることも視野に入れるべきでしょう。

仕事環境の構築

私たちは、自宅に独立したワークスペースを確保し、集中できる環境を整えました。オンライン会議が多いため、マイクやWebカメラの品質にもこだわりました。また、緊急時に備えてモバイルWi-Fiも契約し、ネットワーク障害への対策も講じています。

情報格差を逆手に取る:地域共創への挑戦

「情報格差」はデメリットばかりではありませんでした。私たちはシステムエンジニアとしてのスキルを活かし、地域の課題解決に貢献する機会を見出しました。具体的には、地域の観光協会のウェブサイト刷新や、地元特産品のオンライン販売支援といった副業プロジェクトに夫婦で参加しています。これにより、地域の方々と深く交流する機会が増え、情報交換のハブとなることができました。結果的に、仕事の継続性だけでなく、キャリアの幅を広げることができたと感じています。

直面した課題と解決策:家族と協力して乗り越える

仕事面での課題と解決策

生活面・子育てでの課題と解決策

家族との関係の変化

移住後、夫婦で協力して地域の情報収集や生活の基盤を築く必要があったため、自然と会話が増え、家族の絆が深まったと感じています。子供たちも、地域の自然の中で遊ぶ時間が増え、近所の子供たちとの異年齢交流を通じて、社会性が育まれているように感じています。

移住・リモートワークを経験して感じること、得られたもの

地方移住とリモートワークの生活は、私たちの想像以上に多くのものを与えてくれました。

情報格差は確かに存在しましたが、それを課題として捉え、積極的に情報を取りに行き、時には自分たちで情報を生み出すことで、かえって地域との密接な関係を築くことができました。

これから移住を考える人へのアドバイス

地方移住は大きな決断であり、不安は尽きないことでしょう。特に、私たちのように情報格差を懸念される方へ、いくつかアドバイスをさせていただきます。

  1. 「情報格差」は前提として受け入れる姿勢を持つ: 都市部と同じ情報量を期待せず、むしろ地方ならではの情報収集方法(口コミ、地域の集会など)に慣れることが重要です。
  2. 自ら情報を取りに行く、発信する姿勢を忘れない: インターネットだけでなく、地域のイベントやコミュニティに積極的に参加し、現地の生きた情報を得る努力をしてください。また、自分たちの経験を発信することで、新たなつながりが生まれることもあります。
  3. 家族とのオープンなコミュニケーションを徹底する: 移住は家族全員にとって大きな変化です。配偶者や子供たちの意見や不安に耳を傾け、共に解決策を考えることが、円満な移住生活の鍵となります。
  4. 移住前の複数回訪問と体験滞在を強く推奨します: 実際の生活をシミュレーションすることで、理想と現実のギャップを埋めることができます。短期の移住体験プログラムなどを活用するのも良い方法です。
  5. 地域のルールや文化を尊重する心を持つ: 新しい土地での生活は、その地域の歴史や伝統の上に成り立っています。敬意を持って接することで、地域の方々も温かく迎え入れてくれるでしょう。

まとめ

地方移住とリモートワークは、決して楽な道のりばかりではありませんでした。私たちは「情報格差」という課題に直面し、戸惑いや不安を感じることもありました。しかし、その課題を乗り越えるために、夫婦で知恵を絞り、地域の方々と積極的に関わることで、結果として都市では得られなかった豊かな生活と、地域との深いつながりを手に入れることができました。

もし、あなたが今、地方移住に関心があるものの、情報格差や家族の生活に不安を感じているのであれば、私たちの体験が少しでもお役に立てれば幸いです。挑戦すること、そして地域と共創していくことで、きっと新しい自分と家族の形を見つけることができるはずです。